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キャリアについて考える ~フォロワーシップの可能性~

※過去のコラムの転載です。

自身のキャリアに向き合うときに、まずは過去の仕事を振り返り、意味づけをするという行為があります。

自分がどのような仕事に携わり、どのような成果に貢献し、どのような能力や技術を身に着けてきたのか?これらを問うものです。これらを将来のキャリアにどのように生かすのか?を見出すためのものです。

このような棚卸は、日常的には行われませんので、キャリアコンサルタント等が聴き手となる面談の機会は貴重です。しかし、面談に臨む姿勢にもよりますが、「私はただ言われるがまま会社の指示に従ってきた」「私は人に言えるような資格や技術を持っていません」「私はがむしゃらに単年度の目標達成にむけて仕事をしてきただけ」と言ったところからスタートするケースが多いのではないでしょうか。

キャリアに向き合うスタート地点である「棚卸しを通じた仕事の意味づけ」を外的・内的キャリアの両面からバランスをとりながら効果的に実施するための仕掛けとして「フォロワーシップ」をお勧めします。

私自身のトライアルとして先日、プライベートでお付き合いのある方々と、「セカンドキャリアについて考える」~フォロワーシップの可能性~と題したキャリアワークショップを開催しました。現役組合役員、組合役員OB含めた5名が参加し、自身のセカンドキャリアを構想するきっかけにしてもらうことを狙ったものです。
(コラムで本ワークショップの要点をお伝えし、皆様の今後の組合活動における組合員のキャリア支援のヒントになれば幸いです。)

キャリアを考える際には、タイトルにあるように、「フォロワーシップ」が重要な鍵を握っています。組合役員に限らず、自身の「リーダーシップ」を発揮したケースを振り返るよりも「フォロワーシップ」を発揮した場面の方が格段にたくさんのエピソードが浮かび上がるので有効だと考えます。

「フォロワーシップ」の定義

「フォロワーシップ」の定義は、「当事者意識をもって、組織や上司と協働する意識と行動」です。「フォロワーシップ」の2軸は「誠実な貢献力」と「建設的な批判力」です。

  • 「誠実な貢献」は、組織や上司の目的・目標に共感し、誠実に貢献したい思いによって導かれた意識や行動です。(※実際に測定できる仕事での「貢献」ではありません)

  • 「建設的な批判」は、その目的や目標に貢献するための手段を決定するプロセスで組織や上司に対して自己を主張し折り合いを付ける意識と行動です。

これら2軸のバランスによってフォローシップタイプが決定します。

  • 貢献力と批判力が共に高いと「協働型フォロワー」

  • 貢献力が高く、批判力は低いと「従属型フォロワー」

  • 批判力は高く、貢献力が低いと「孤立型フォロワー」

  • 貢献力と批判力が共に低いと「消極型フォロワー」

これらのタイプは、「年代」「目標難易度」「チーム編成」「上司部下関係」「ワークスタイル」などによって、変動しますので、自己認知の上、調整するセルフマネジメントが重要になります。(現実では、無意識に自身の言動や振る舞いを変動させています)

ワークショップでは、まずはフォロワーシップを理解し、自身のフォロワーシップ行動を振り返りました。

「書記長時代に委員長と協働で人事制度改革に取り組んだ。あの時は委員長に対して、経営に対して、組合員に対して多方面に自身の貢献力と批判力が高次元でバランスさせながら組合活動を頑張っていた。」

「組合員の悩みに直接向き合うときは、その組合員の仕事への貢献したい思いと、それを実現するための独自の手段(建設的批判力)を中心に丁寧に話を聴くことに集中していた。」

「新入社員時は、上司や組織に対して完全に従属型であったが、年を重ねるごとに協働型になってきた。やはり、組織の理念に共感することや、具体的に成果を上げる手段について上司と徹底的に話し合い、納得感を得ることが大事だ。」

「10年以上の組合役員専従時代を振り返ると、組合員一人ひとりのフォロワーシップの発揮を組織的に支援したのだと気づいた。集団的フォロワーシップの発揮を支援することが身に着けた能力と言える。」

などなど、直接、外的キャリアの棚卸しになる意見だけではなく、幅広く自身のキャリアを振り返る対話の場となりました。

また、意見を整理すると、労働組合の役員がこれからのキャリアを考える上で、組合活動経験から「得たもの」としてまとめています。

組織内のフォロワーシップを促進する力

  1. 個別的フォロワーシップの促進(個別的労使関係)
    上司部下の関係性の健全化に向けて
    ・目標管理の運用適正化
    ・組合員のワーク&ライフキャリアの支援

  2. 集団的フォロワーシップの促進(手段的労使関係)
    ・労使交渉による制度の構築
    ・労使協議による制度運用の適正化
    ・労使関係上での経営提案

上記項目に紐づく、具体的なエピソードを引き出し、そこから身に着けた具体的な力を整理することで、キャリアの棚卸となるのではないでしょうか。組合役員や委員の方が退任する際の振返りにもご活用いただければ幸いです。