このコラムは、元連合副会長・元JCM議長(現顧問)・元電機連合委員長(現名誉顧問)である鈴木勝利顧問が、今の労働組合、組合役員、組合員に対して本当に伝えたいことを書き綴るものです。
日本では労働組合が政治問題に取り組むことに異論も多く、いろいろな意見が交わされているが、資本主義社会の誕生とその後の発展を見ると、労働組合が政治に取り組むのは必然であり、むしろ取り組まなかったとすれば、それこそが労働組合の責任を果たしていないとさえいえるのが歴史が示している。
資本主義社会の誕生はイギリスにおける近代市民社会の誕生による。それまでの封建社会は革命によって崩壊、王政から市民中心の社会へと変貌を遂げる。
市民中心の社会はある思想を「燎原の火」のごとく、ヨーロッパ社会に広げることになる。その思想こそが現代においても生きながらえているマルクス主義である。
マルクス主義は、産業革命によって社会が混乱し、人々の生活が困窮していたことで影響力を発揮する。西欧社会が王政による封建時代に決別し、市民中心の近代市民社会を誕生させ、産業革命という新しい経済システムに移行した時、多くの矛盾や混乱を招いていた。その様相は下記のようであったらしい。
ここでマクニール氏は上記著書に中で重要な指摘をしている。産業革命によって労働者は新しい工業都市へ集中していくが、それまでの都市が急激に膨張したため、従来の制度では対処できない社会問題が作り出されていくのだが、その解決に向けての動きである。
現代社会では当たり前である社会インフラの整備が人々の意識に影響を与え、「貧困や困窮が資本主義制度によるもの」というマルクスの主張は急速に人々の支持を失っていくのである。
そして私たちが最も関心を持つべきは、社会の安定に労働組合の存在が欠かせなかったことである。それは今も変わりはない。むしろ労働組合が政治にかかわり、政治活動に取り組ことこそが、社会の安定のカギを握っているとさえいえるのである。
それゆえに、労働組合が正論を主張し、政治的立場を明確にすることが、自分たちの政治的主張に差しさわりがあると考える人々は、「労働組合の政治活動」に異論を唱え続けているのである。
そうした風潮に惑わされずに、労働組合が社会の発展や安定に欠かせない存在である歴史的使命を再認識し、現代社会の中でどのような活動を進めることが必要なのか、絶えず考えながら取り組むことが求められている。そして、それこそが「労働組合の社会的使命」を果たすことにつながるのといえるのである。