ミドル・シニアのキャリア自律を向上するには?
※過去のコラムの転載です。
ミドル・シニアのキャリアについて考えてみたいと思います。
ミドル・シニアには明確な定義はありませんが、一般的には40~60代を指すようです。この年代の就労人口の構成比率は58.8%と6割近くを占めています(2017年 総務省統計局就業構造基本調査より)。一方で、39歳以下は4割にも満たない状況です。現状の人口動態から考えると、39歳以下が占める割合は下がり、ミドル・シニアの占める割合の上昇は確定的です。
さて、そのミドル・シニアにはいくつもの課題が挙がっています。
・管理職のポスト不足
・キャリアプラトー
(組織内で昇進・昇格の可能性に行き詰まり、あるいは行き詰まったと本人が感じて、モチベーションの低下や能力開発機会の喪失に陥ること)
・会社(出世)を軸とした外発的動機付けから内発的動機付けへの移行ができていない
・生産性の低下(パフォーマンスの低下×パフォーマンス以上の賃金)
・生産性低下に起因するリストラの対象
・会社へのぶら下がり
また、労働組合とは直接の関わりはありませんが、ポストオフ(役職定年)後のモチベーション低下という課題もあります。いずれにせよ、6割近くを占める層でこのような課題があることには強い留意が必要です。一方で、筆者の関わる調査において、キャリア自律の向上に関心を持っている組合が増えているという実感を得ております。組合としても無視できない状況になりつつあると言ってよいでしょう。
それでは組合とすればどのような対応をするべきでしょうか。自律的なキャリアを獲得するには、キャリアコンサルタントのカウンセリングが有用です。ただし、ミドル・シニアだけにカウンセリングをやればいいわけではありません。現状のミドル・シニアの問題はキャリア自律を考えてこなかったことが原因の一つだと考えられます。そのようにならないためにも、若年層も含めた全世代に対するカウンセリングが有用だと言えます。
カウンセリングの有用性に関しては、パーソル総合研究所の「従業員のキャリア自律に関する定量調査」でも示されています。ただし、カウンセリング経験者は少ない(回答者10,000のうち6.4%)状況です。三井物産労働組合様のように専従役員全員がその資格を持っていれば(※)、組合として自由度の高い動きができるのでカウンセリングを展開させやすいでしょう。しかしながら、ほとんどの組合ではそのような体制にはなっていません。そのため、弊社のような外部組織を通じてキャリア相談のシステムを確立するというやり方も想定されます。
カウンセリングによってキャリア自律は向上したとしても、通常業務への還元が必要です。そのためには、目標管理制度を通じて中長期的な目標に落とし込むことが必要です。上司との話し合いを経ているので、上司の理解を得られています。ミドル・シニアになると、上司とのコミュニケーションが減る傾向にあります。ですが、たとえ量的なコミュニケーション(日常の会話)が減ったとしても、質的なコミュニケーション(目標管理など評価に関わるコミュニケーション)は低下させてはいけません。
キャリア自律というと自分一人で確立しなければならないととらえられそうですが、そうではありません。キャリアコンサルタントや上司など、活用可能なリソースを活用・相談すればさらに向上します。ミドル・シニアの年代になると人に頼らないという無駄なプライドが生じてしまいがちなので、彼らに人やシステムの活用の有用性を説明することは組合の役割とも言えるでしょう。
(※)三井物産労働組合様の取り組みはこちら(外部リンクとなります)