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組合活動を通じた働く人々へのキャリア支援

※過去のコラムの転載です。

新型コロナを契機に、組織ではニューノーマルといわれる新たな働き方が模索されています。一方、働く側も仕事と生活の新たなあり方に直面しています。

社会が大きな変化をしていく中で、いままでの働き方から脱却すると同時に、働く側も自らの「キャリア」と「働く意味」を創造する好機であると捉え、労使ともに個人のパフォーマンス向上にとどまらない「働きがい」を生み出すための働きかけや支援が求められます。

「働きがい」とはなにか

そもそも「働きがい」とは何でしょうか。

ユースキャリア研究所の高橋浩先生によると「働きがい」とは、「働くこと(働いたこと)に値する経済的な価値、および、社会や他者への貢献によって得られる『誇り』や『意義・意味』といった心理社会的な価値」であると定義されています。

コロナ以前の「働き方改革」において、既に企業では残業時間の制限や有給休暇取得の義務化などの仕組みの改革とともに「働きがい」を高めることによる生産性向上が追及されていました。しかし今回のコロナ禍おいて多くの企業や業種で在宅ワークが増加したことで、仕事の現場が家庭に持ち込まれ、以前よりもよりいっそうワークとライフの関係が問われるようになり、またジョブ型雇用という個人の専門性が問われる働き方も注目され、従業員一人ひとりも自らより良いキャリアを創り出す(キャリア自律)ことが求められています。

ジョブ・クラフティングと労働組合活動

働く人が「自分らしく働きがいを持って働くためにはどうしたらよいか」を考えるうえで、仕事に対して自ら考えて主体的に意味を見いだしたり、仕事内容の範囲を変えたりする「ジョブ・クラフティング」という考え方も注目を集めています。

ジョブ・クラフティングとは、米イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン名誉教授が、2001年に提唱した理論で、従業員が担当する仕事を自ら積極的にデザイン(例えば、今の仕事への取り組み方を見直したり、自分の強みを発見したり)することで仕事の中に主体的にやりがいを見出していくという考え方で、次の3つの要素を含みます。

  1. 仕事や作業そのものの改変 

  2. 仕事や作業上必要となる人間関係の内容や幅の調整

  3. 仕事や作業に内在する意味や意義の再構築

上記を通じてジョブ・クラフティングは、仕事に対して「やらされ感」から「自分ごと」として捉え、また「この仕事は誰か・何かの役に立っている」、もしくは「自分がいることの価値」を感じることにより、働くことにやりがいを創出していきます。清掃業務をエンターテイメントに価値転換したディズニーランドのカストーディアルキャストの話は有名ですが、ジョブクラフティングの好例です。

翻って労働組合役員についてみると、弊社が筑波大学との共同研究した際インタビューした皆さんは自ずとジョブ・クラフティングをしていたように思われます。

なかば仕方なく(?)引き受けた労働組合役員業務ですが、本業とは異なる業務や役割を担い、本業との両立しながら周囲と共同・協力し、リーダーシップを発揮していく経験を通じて、本業に応用したり仕事の選択肢を広げ、キャリア自律へつながっていることが研究結果から示されています。

コロナ禍においてますます個人のキャリア支援も含めた組合員への支援活動をどのように進めればよいか悩まれている組織も多いと思います。インタビューにおいて「良質なビジネススクール」と比喩された労働組合役員の経験を改めて見直し活用していくことも、組合員の「働きがい」を生み出すキャリア支援の1つの方法ではないでしょうか。