このコラムは、元連合副会長・元JCM議長(現顧問)・元電機連合委員長(現名誉顧問)である鈴木勝利顧問が、今の労働組合、組合役員、組合員に対して本当に伝えたいことを書き綴るものです。
世界で一番短い国歌は「君が代」といわれる。
ゆっくりと雄大なリズムで歌い上げる「君が代」は、文字に表すと世界で最も短い国歌だという。
ちなみに世界にはコソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、サンマリノ(イタリアに囲まれた小さな国家)などのように、歌詞のない国歌もあるという。
太平洋戦争(第二次世界大戦)では、日本がアジア諸国を侵略した象徴として国歌「君が代」と国旗「日の丸」が存在した。そのために、今もってかつての日本の軍国主義を彷彿(ほうふつ)させるとして、とくにアジア諸国から評判が悪い。
しかし歴史を見ても、どこの国も世界の中心は自分の国だと考えている。その誇りを否定することはできない。
賛否はあるものの、このような歴史観をもとに作られた資料をさらに紐解くと、「君が代」の言葉の出典は『古今集』の巻頭にあるという。
とは言いつつも、必ずしも正式に国歌として制定されたものではないため、オリンピックなどのスポーツ競技の優勝者を称える際、あるいは小中学校で式典が行なわれる際に歌われただけのようだった。
そんな中、第二次世界大戦中に軍隊を中心に使われてきたため、敗戦によって「軍国主義に対する反省」、さらに「新憲法で天皇が国の象徴とされた」ことから、学校で君が代を斉唱することに対し、その是非をめぐって激しい論争が繰り返された。その際には、「君が代」に代わる新たな国民歌制定の運動なども生まれていた。
そして、「国旗及び国歌に関する法律」によって、ようやく「君が代」は日本の国歌と制定されることになる(平成11年8月:公布日である8月13日が「君が代」記念日)
♪ 君が代は 千代(ちよ)に八千代(やちよ)に 細石(さざれいし)の 巌(いわお)となりて
苔(こけ)の生(む)すまで
戦時中の戦意高揚のために歌われたことが戦後の論争の元となったのだが、歌詞そのものをめぐっても意見がたたかわされた。
とくに「君が代」の解釈で、「君」が軍国主義の根幹となった「天皇」を指すからと言われた。「軍国主義は、軍人が天皇を利用して、国民を悲惨な戦争へ導いた」と考える人々にとっては、「君(天皇)が代」は、軍国主義の象徴として否定するのは当然の論理的帰結なのである。
しかし、スポーツの祭典や、学校で唱和するときにこうした歌詞の意味を抱いて歌う人は皆無であろう。むしろ「君」は国民を指しているという意見もある。そう思えば何の問題もない。
世界の中でも、そもそも国歌がない国もあることを含めて、国歌とは何なのか、新年を迎えて改めて考える機会を得たように思う。