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キャリア共助と労働組合(前編)

※過去のコラムの転載です。

キャリアを自分で決める割合が半分に満たない日本人

リクルートワークス研究所が報告した「『つながり』のキャリア論」(以降、当論)では、キャリアを自立・自律するにはキャリア共助が重要だと述べています。以降は当論の内容を交えながら、キャリア共助と労働組合について前・後編と内容を分けて述べることといたします。

先ずは調査結果に基づいて、キャリアを取り巻く現状を説明いたします。「5か国リレーション調査」(以降、調査①)では、他の4ヶ国(アメリカ、中国、フランス、デンマーク)と比べて仕事満足度は最も低いものの、離転職意向は中位であることが分かりました。つまり、仕事に不満を抱えながらも会社から離れたいと思う気持ちは強くない状態が見て取れます。他国と比べて労働市場の流動性が低いこともありますが、日本の労働者は好んで勤め続けていないという後ろ向きな状態であることは間違いないでしょう。
※①リクルートワークス研究所「5カ国リレーション調査」

生活時間配分とライフキャリアへの納得感

「働く人の共助・公助に関する意識調査」(以降、調査②)では、生活時間の配分に満足している人は不満を抱えている人と比べて幸福度が高いだけでなく、生き生き働く実感、自分のライフキャリアへの誇りや納得感も高い傾向がみられました。また、働く人全般で生き方への満足度が低いことも分かりました。

筆者はこれまでに多くの労働組合様の調査を行いましたが、上記は大いに首肯できる結果です。(調査②を直接分析していないという前提で申していますが)配分に満足している人は、生活時間を与えられているのではなく自ら生み出しているという効力感があり、そこから起因するライフキャリアへの誇りや納得感が生じ、幸福度が高くなっていることが推察されます。

不満を抱えている人の中には、どうにもならないくらい多忙な人もいるでしょうが、自分で時間を生み出す努力をしていない人やその術を知らない人もいます。労働組合として、このような人たちにどのようにアプローチするかは活動課題の一つと言えるのではないでしょうか。
※②リクルートワークス研究所「働く人の共助・公助に関する意識調査」

キャリアや人生における自己決定感も低調

また、調査①から「キャリアは自分が決める」という意識を持つ割合は、アメリカ、中国、インドでは7割前後を占める一方で、日本は45.5%と半数に満たない状況であることが分かりました。もう少し具体的に説明すると、[キャリアは状況に応じて決まる][キャリアは自分が決める]という選択肢において、日本は前者で54.5%、後者で45.5%を占めています。単純に外国と比較することがどこまで意味があるのかという意見もあるかもしれませんが、自分で決める割合が半数に満たないと言うことに関しては疑いのない事実です。

さらに、「世界価値観調査」では、「これからの人生に選択の自由とコントロールがある」と考える人の割合では、欧米諸国や近隣の中国や韓国は約60~80%を占めている一方で、日本は44%と大きく下回っています。全世界で何位であるかは調べることはできませんでしたが、キャリアや人生における自己決定感は欧米やアジアの国と比べて低調であることには疑いがありません。キャリア自律以前にキャリア自立が伴っていない状況です。

後編では、このような状況で必要になる共助の役割と労働組合が行い始めているキャリア自律対策について述べたいと思います。